ロシアンルーレットⅡ【ｺﾐｶﾙｱｸｼｮﾝ】

　ようやく苦しみから解放された多恵の脳裏に、さきほどの記憶が蘇る。


「さっきあの男から、あの人が死んだって聞いて…　そしたら私、急に息苦しくなって…　手や足も痺れるし…　死んじゃうかと思った。」


「過換気症候群。酸素の吸いすぎだ、欲張りめ。」


　茶化すように木戸は言い、悪戯っぽく微笑んだ。


「あいつは死んでない、安心しろ。これは極秘情報だ、富樫たちには言うんじゃねぇぞ。」


「嘘つき。」


　そう言って多恵は木戸を睨み付けるも、その嘘が木戸の優しさから出たものだと、多恵は気付いていた。


「どうしてそんな嘘つくの？」


　木戸の本心を知りたくて、木戸の表情を読み取ろうと凝視しながら多恵は尋ねた。


「お前が心配だ。無事旦那と子どもの元へ返してやると約束したしな。」


　そう言って木戸は、困ったように苦笑した。


　やはり、この男の考えていることなどわからない、掴み所が無さ過ぎると、多恵はすぐに匙を投げてしまった。