ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】




 やがて大勢の捜査官が雪崩れ込み、室内は揉みくちゃにされ、その人の流れに乗って移動するうち、いつの間にか、多恵ちゃん、兄貴と、俺たちははぐれてしまった。


 パトカーひしめくビルの外、俺と谷口さんが佇んでいると、


「りっくん!」


 大声で誰かを呼ぶ声がどこかから聞こえ、俺がキョロキョロ辺りを見回していると、隣の谷口さんは、一点を見詰めて両手を広げていた。


 谷口さんの視線の先には、警官たちを掻き分けるようにして、全力でこちらに駆けて来る多恵ちゃんの姿。


 俺も谷口さんの横で、同じように両手を広げて待ち構えてみる。


 多恵ちゃんは、迷わず谷口さんの胸に飛び込んだ。


 というか、俺なんか、完全に眼中外だし。


 泣きそうな顔して、多恵ちゃんを抱きしめる谷口さんを横目で見やり、


「良かったね、りっくん」


 と言ってやった。


「黙れ、皆人」


 谷口さんは幸せの絶頂であっても、口が悪い。


 多恵ちゃんが俺の名前に反応して、ようやく俺を視界に入れた。


「皆人くん!」


 目を見開くも、断じて谷口さんの胸から離れようとはしなかった。


 お熱いことで……


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