ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 それでも谷口さんは、窪田から視線を外さない。


 多恵ちゃんは、怒りを通り越して悲しくなってしまったのか、目に涙さえ浮かべている。


「できなかったんだよ、あっさり振られた。俺になびかない女、日本三大ミステリーのうちの一つだな」


 あと二つは何だよ? バカじゃねぇの?


「泣かすなよ」


 ヤバいぐらいセクシーな笑みを見せ、窪田は言った。


 谷口さんは頷くと、ようやく多恵ちゃんを振り返り、再びきつく抱きしめた。


「それと、お前も」


「え? 俺ぇ?」


 不意にこっちにふられて、俺は思わず自分を指差し、目を見開く。


「あの可愛い彼女泣かせたら、俺が彼女を落としにいくからな。男に泣かされた女を救うのが俺の使命だ」


 シレッとそんなことを言う。


「アホくさ」


 俺がため息交じりにそう言うと、窪田は満面の笑みをうかべた。


 まただ、やばい、惚れそうだし……抱かれてもいいとか思ってしまいそうだ、あっぶねぇ。


「じゃあな」


 窪田は身を翻し歩き出すが、思い出したように立ち止まって振り返り、


「龍なら、もうすでに彼女の元へ向かったぞ。龍の彼女、相当恐いらしいな」


 そう言ってまた笑うと、再び背を向け歩き出した。






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