崩壊 【サスペンス】
警察からの電話
 翌日、息子が食事を催促する物音が聞こえた。それはお腹が空くと壁を叩いてそれを知らせる。

 息子がひきこもり始めた頃は、多少なりとも腕をふるい、美味しいものを作っていた。

 けれど毎日毎日、お盆の上に乗ったカラの食器を見ている内に、言いようの無い虚しさが襲ってきた。

 いつしか、いつからか作る食事は焼いたトーストだけになっていた。それも過去の話しで、今ではスーパーで安売りしている見切り品の菓子パンをそのまま扉の前に置いている。

 本当に息子はこの扉の向こうにいるのだろうか、そんな疑問すら感じる。もう息子は死んでいて、実は見知らぬ者が住み着いているのでは無いか、そんなふうに感じるようになっていた。

 そういえば昨日は娘と揉めたせいで菓子パンが切れていた。仕方ないので茶碗に昨日のご飯を盛っておいた。

 息子の部屋からは何か怒声が聞こえるが、今のわたしには判別できるような気力はなかった。
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