空に叫ぶ愛

無意識に進んでいた足が止まった。


フワリと風が私の髪とスカートを揺らす。


それがスローモーションのように見えて私をフワフワした世界へ連れて行く。


そんな私を見て空が「ん?」と立ち止まり、私を見つめる。


私、どうしちゃったんだろう……



「愛ちゃーん!!!」



大声で私を呼ぶ声。その声が私と空に届いたことでフワフワした世界が一瞬にして終わってしまった。


ほんの数秒間。


スローモーション化していた目に映る映像も普通に戻り、頭も正常に戻った。


翔……


違う意味で眩しい笑顔を見せてくる翔をうらめしそうに見上げる。



「おはよ、愛ちゃん!」


「………」



私は暑苦しい翔に何も言わず歩き出す。そしてそのまま空さえも追い越した。


私ってば……あり得ないから。


さっきの異様な胸のドキドキはなに!?




ホント、あり得ない。
< 38 / 374 >

この作品をシェア

pagetop