素直になれなくて
*5それぞれの時間




「ちょっと!!!夏美」

「ど・・どうしたの、愛里?顔、こわ・・」

「さっき、隣のクラスの子から聞いたけど・・・」

「うん?」

怖い顔をし、愛里の肩がプルプルと震えている。


「稀田くんと毎朝、電車通学してるって本当なの!???」


「あ、うん。同じ駅だから」

「・・・」

愛里の表情が今度は、ポカーンと口を開け一時停止をしている。


「あんたは、どうしてそっち方面に疎いの!!!??」

「いたっ・・・え?」

バシっと頭を叩かれた。

「まぁ、いいわ。で、稀田くんの情報ぐらいは流してくれるんでしょうね」

「え・・あ・・・それ、毎日のように他の子達から聞かれるけど・・特には」

「は!?じゃあ、毎朝なに話してんのよ!?」

「昨日の授業のこととか・・・今日の授業のこととか・・・」

「授業のこと話してて、何が楽しいの!?もっと、稀田くんの恋愛について聞いてきてよ!」

「あれ・・愛里、稀田くんのこと好きだっけ?」

「同じクラスになれば、好きになるよ!だって、あんなにイイ男いないじゃない!?」

「・・あはは」

確かに、みんなが言うとおり稀田くんは綺麗な顔立ちしてて、一緒に登校してるとすれ違った人が振り返っちゃうぐらいの人。


「大丈夫だよ、ただ方向が同じだから一緒に登校してるだけだから。後・・・」

「後?何!?」

「・・なんでもない」

遼平くんとのことがあったから・・・
また他校の男子生徒に絡まれると思って、心配してくれてるだけ。

「稀田くんの情報入ったら、すぐに教えてよ!!」

「はーい」

でも、そのことは愛里に言えなかった。

だって、いつまでも初恋を引きずっているなんて恥ずかしいと思ったから。










< 71 / 112 >

この作品をシェア

pagetop