人こそ芸術 part1

僕のオフィス


僕のオフィスにある水槽に餌を入れる。

可愛い熱帯魚たちが小さな口で餌を頬張る。

見ているだけで癒される。



午前中の手術も無いし、診察に訪れる人がいない限り午後まで暇である。

なら、午前中は患者さんの状態を見回りに行くことにしよう。



「体調はいかがですか?」

優しく微笑む。

「前よりも、だるさが無くなりました」

この患者さんは先週、僕が心臓移植の手術を行った大橋美鈴(オオハシミスズ)さん。

「よかったですね。このまま順調に回復していけば、来週には退院できますよ」

「本当ですか!?」

大橋美鈴はキラキラした目で僕を見つめる。

「はい」

笑顔で答える。

僕は大橋美鈴の病室を出た。

次に向かったのは一昨日、拡張型心筋症の手術を行った山野南の病室。

「お体の調子はどうですか?」

ベッドに横たわる山野南に問い掛ける。

返事が無い。

僕に背を向けている体勢なので顔を覗き込む。

山野南はスヤスヤと眠っていた。

その寝顔はとても美しい。

白く透き通る様な肌。

長い睫毛。

薄めだが綺麗な曲線を描く唇。

栗色の髪。

筋の通った鼻。

くびれた腰。

引き締まった太もも。

細長い手足。

何処を見ても美しい。

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