六年一組、本紛失事件
9 波教頭の策略
 二時間目の音楽室は誰も生徒がいなかった。

藤美教諭は適当にピアノの鍵盤を弾いていた。

「藤美先生、上手ですな。ただ、鍵盤を叩いているのに、もうちゃんとした曲のようだな」

 音楽室に突然現れたのは波教頭であった。

 藤美教諭も突然の来訪に手が止まった。

「いつ、いらしたんですか?」

 藤美教諭は波教頭がストカーに見え、背筋が寒くなった。

「さっきだよ」

 波教頭なら、藤美教諭の一日のスケジュールなど熟知しているのだ。




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