六年一組、本紛失事件
19 高蔵の自信
 すでに四人は二号棟にいた。

 エレベーターで六階まで上がった。

 団地の建物は棟が違っても同じ造りなので、部外者は迷ってしまいそうであった。違うのは表札だけだ。

『木村』と書いてある。どこにでもある名字なので、木村啓太郎ではないかもしれない。しかし、馬屋は自信満々に家のチャイムを押した。

 室内から足音が聞こえる。ドアが開いた。

 木村啓太郎本人である。

「やあ!」

 馬屋は木村に対してあいさつをした。

「どうした?」

 木村は不思議そうに馬屋を見ていた。なぜここに馬屋がいるのか理解できていないのだろう。
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