六年一組、本紛失事件
20 高基教諭の身上
 高基教諭は準備室のドアを注視していた。

 ドアが勝手に開いた。田脳なら怒鳴りつけてやろうと、高基教諭は身構えていた。

 開いたドアの前に立っていたのは波教頭だった。

 高基教諭は一瞬、体が動かなくなった。

「教頭……」

 高基教諭は言葉を失った。

「高基君、ここで何をやっとる!」

 波教頭は怒りを抑えているが、爆発寸前である。冷たい視線が高基教諭の体を刺す。

「その……」

 高基教諭は下を向き、もじもじとしているだけだった。言い訳を考え中で思い浮ばなかったのだ。
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