六年一組、本紛失事件
24 高基教諭の焦り
 高基教諭は一階にある用務員室の前にいた。

 ドアを開けた。

「すいません……」

 と、高基教諭は言った。反応はなかった。そのはずである。誰もいないからだ。

 高基教諭は焦っていた。ここのままでは藤美教諭が波教頭に何をされるかわからないからだ。

 生徒は全員下校したので校内には誰もいない。職員室にいる教師と用務員くらいなものだ。

 高基教諭は用務員室を退室し、廊下まで歩いた。静かな廊下だった。

「あっ!」

 高基教諭の目の前に幽霊のようにスッと現れたので、驚きの声を上げたのだ。


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