六年一組、本紛失事件
「先生、それはないです」

 子吉沢はすかさず言った。これがアリスではなかったら、黙っていただろう。

「そんなことが言えるか?」

 高基教諭もむきになっている。

「絶対に美田さんは盗んでいません!」

「お前はかなり、美田にあまいぞ。可能性はあるぞ」

「先生、証拠もないのに、美田さんを犯人呼ばわりするのはいけないんじゃないですか?」

「うるさい! 黙れ! 犯人だから、いないんだ」

「ぐっど、もーにんぐ!」

 もう少し遅く登校すればいいのに、混乱に飛びこんでくるとは、未来のスターの宿命だ。アリスはいつもの調子である。
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