六年一組、本紛失事件
 柴田校長は金縁メガネをかけ、風が吹けば飛んでいってしまうほど小柄で、気の弱そうな感じである。

「さあ、みなさん新学期も始まったことですし……」

 ありきたりの言葉に生徒たちはうんざりだ。波教頭がいなければ、この場はダラダラした雰囲気になっていたであろう。

 三年生と五年生はクラス替えがあるので、気分一新できるが、六年生は私立の中学に受験する人がいるので、それどころではない。基本的に担任の教師も代わることもないはずなのだ。六年一組の担任になる予定だった教師は産休である。

 柴田校長の話は終わった。

「校長先生、ありがとうございました。それでは、新任の先生を紹介する。高基先生」

 波教頭に言われ、高基教諭が現れた。


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