涙の枯れる頃


私は、雪が傍にいる安心感を感じながら、ゆっくりと、曲を弾き初めた

今日のピアノの音は、とてもやわらかく、いつもと違った。

それが、いつもと違うピアノだからか、雪が傍に居るからなのかは、分からなかった。



…ただ。
とても、空気が心地良くて、小4からピアノを初めたけど、初めてピアノを弾いてて“幸せ”を感じたんだ―――…。


私が弾いてる間、雪は目を瞑って、口元の端を軽く上げて、聞いてくれた


そんな雪を見ると、何だかこっちまで連られて、笑顔になったんだ。


「…とっても綺麗な音だったよ!!!
美姫すっごぉいっ!!!美姫はピアノが合ってるね!!!」
「アハハッ!! 誉め過ぎだよっ!!
雪、誉め上手だねっ!!!」
「えー。俺、本気で言ってるんだけど~」
「わっ…」
雪は、頬を膨らまして、私の手を勢い良く引っ張り、立ち上がらせた。

いきなりの事で、少し吃驚した。


「タッチっ!!!美姫の鬼っ!!!」
雪は私を触って、走り出した
こうして、私達のおふざけ鬼ゴッコが始まった―――…

けど。
私が雪にタッチして、すぐに終了―――…。

のハズだったんだけど…。



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