隠す人


二宮惠一の自宅は、都心にほど近い住宅街の、マンションの一室だった。
対面式キッチンのついた、小奇麗な2LDK。

二刑事が二宮の自宅マンションに到着したときには、既に捜査班が初動捜査に取り掛かっていた。

二人は現場の状況を一目見て、頭の中で同じ事を考えた。

(ウチよりきれいだ・・・)

戸棚やクローゼットの扉という扉が全て開けられ、中身が床に散乱しているのに、「乱れている」という印象を受けないのは、部屋の広さに対して持ち物が圧倒的に少ないからだろう。

10畳ほどのリビングには、一人がけのソファとガラステーブル、小さなワイヤーラックがあるだけだった。
この部屋を荒らせと言われても、限界があるというものだ。

二宮は、捜査の邪魔にならないようキッチンの隅に腕を組み立っていた。

原田刑事はまず、美音子から託された任務を果たす。
「これ、社長の奥様から惠ちゃんに預かりました。カナダのお土産、メープルシロップだそうです」

(け、惠ちゃん・・・)
秘書ロボットの顔が、心なしか赤くなっている。
フフフ、こないだのアンパンのお返しだ。

報復を果たした原田は、気持ちよく本題に入る。

「何か盗られた物は?」

「いいえ、何も」

寝室から捜査員が、タイミングよく顔を出した。

「二宮さん、机の上に何かが置いてあった跡があるんですが。パソコンか何か盗られてないですかあ?」

「・・・盗られました」

この物の少なさで、二宮が机上のパソコンの盗難に気づかなかった訳がない。

「二宮さん、あなたなんで一々嘘をつくんですか!このオオカミ少年!」

「こうなったらもう、徹底的に調べさせてもらいますからね」

それはそれで、好都合だった。
自宅侵入事件の捜査にかこつけて、二宮が隠している事柄の一端を見つけられるかもしれない。

二刑事は、慎重に部屋の中を調べ始めた。





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