隠す人

「え?何のこと?」

「最初の事情聴取で、わたしに嘘の証言をするよう指示したのは。
私を守るためだったんですよね?」

佐伯課長が、大げさに驚いてみせる。

「はぁ?そんなこと、あったかな」

「他と辻褄が合わない私の証言はすぐに嘘とばれて、私は疑われた。
警察やマスコミにあれだけマークされれば、
犯人もそう簡単に手出しはできませんからね」

佐伯課長は、最後までしらを切りとおす。

「さぁ、なんのことだかよく分からないけど。まぁ、元気でな。またここに戻って来いよ」

「私が秘書でいる意味は、もうないですよ」

「秘書として、じゃないよ」

「え?」

「あー、もう時間がないぞ?早く荷物をまとめてきな」

佐伯課長が、二宮の背中を押した。


< 80 / 88 >

この作品をシェア

pagetop