知らなかった僕の顔
僕が何かをわかりかけた時、森若ちゃんが口を開いた。


「たぶん、長谷川くんが見掛けたのはその人のことだと思う。その人は、宮田くんと付き合う前に付き合っていた人。もうちゃんと終わってるの。もちろんもう会うつもりなんかない」

森若ちゃんは、僕を真っ直ぐな強い目で見つめた。

その目には涙がたまっていた。


僕は、それでもう充分だった。


森若ちゃんは、全てをさらしに僕をここに連れてきた。



僕のここ数日間の行動は、彼女を困らせ追い詰めた。

終わった過去の不倫の話など誰もしたくないし、する必要もないのだ。


僕のいじけた態度は彼女に対する迷惑な甘えだったと改めて思った。


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