知らなかった僕の顔
僕は今、昔自分が望んでいたような、穏やかで幸せな日々を過ごしている。



森若ちゃんと過ごしたあの日々は、かけがえのない大切なものだけど、少しずつ薄れていく記憶が悲しくもあった。


彼女が少しだけ引きずっていた右足を思い出すと、たまらない気持ちになった。


その右足の理由を僕は知らない。



「パパ、泣いてるの?」


砂場で遊んでいたはずの息子が、いつの間にか側に立っていた。


「泣いてないよ。ちょっと目に砂が入ったんだよ」


僕は素早く目を擦り、息子の頭を撫でた。

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