知らなかった僕の顔
僕がアパートへ着く頃には、怪しい男たちの引っ越し作業は跡形もなく終わっていた。


少しホッとして、僕は自分の部屋へ向かった。

部屋に入るなり、昨日までは空き部屋だった隣の部屋とを隔てる壁に耳をあてた。


おんぼろアパートの薄い壁から、音量を低くしたテレビの音が聞こえる。


やっぱいるな…。


僕は、コーヒー牛乳を飲み気分を落ち着かせた。

でも…まあ…別に危害を加えられるようなことはないだろうしな…。
あの笑顔をいいように捉えよう…。


僕は大きく息を吐き、ブンブンと頭を振った。

あの男のことを気にしてる暇はない。


今日は嬉しい日なんだから。


僕は気を取り直して、今晩森若ちゃんとのデートに着ていく服を選ぶことにした。

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