奈良の都の妖しい話
「都の方が騒がしいわね…。」

「大仏が完成したそうよ。」

「大仏が?」

「それで、開眼供養を行っているそうですよ。」

「そうなの…。…ねえ、少し見に行かない?」

「えっ」

「行ってらっしゃい、たまには二人きりになるのもいいでしょ。」

「…わかりました。姫、行きましょう。」

「ええ。」

美羽子は娘―紫恋の頭を撫で、黒矢の手を取った。

< 216 / 291 >

この作品をシェア

pagetop