メモリーズ~I



椅子に腰をかけたお母さん。



「お願い。おかッ。 あたしの話を聞いて。」



お母さんは、「あたし」っと
口にした。




そして話はじめた。





「昔、あなたのお父さんは
このアルバムの写真に映ってる人と結婚したの。


そして何ヶ月か後にあなたが産まれたの。



でもあなたのお母さんは、あなたの一才の誕生日を
祝った一ヶ月後に 急に家で倒れて 行き先の病院で
お亡くなりになったらしいの。」


「つまりあたしとは一年しか
過ごせなかったって事・・・」


「そうよ。
お母さんが亡くなってから
あなたのお父さんは必死に働いてたらしいの。」


「お母さんは、どうやって
お父さんと出逢ったの?」



「あたしは、あなたのお父さんの
会社での相談相手だったの。
それでいろいろ 相談し合っていくうちに
あたしが 可哀想におもって、
あなたのお母さんになりたいといったの」




「あたしの・・・・・お母さん?」


「そうよ。
最初はお父さんも驚いていたけど
あなたのお母さんに何度も何度もお願いしたの。
お父さんも、子育て一人じゃムリだから
そして結婚して、あなたのお母さんになった」


「お母さんの体って・・・。」



「そう、あなたのお母さんになって
まもない頃に 子宮がんって言われたの。
赤ちゃんを産めない体になったの。

泣いてるあたしを お父さんはずっと抱きしめてくれたのよ。
「華野を立派に二人で育てよう」って言ってね。」
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