雪花-YUKIBANA-
再び沈黙がおとずれた。

大切なことを語るために、用意されたような沈黙。


布団に横になる桜子も、そのかたわらに座った僕も、少し緊張していた。


「あのさ、コバに会ったんだ」


声が裏返りそうになるのを必死でこらえて、僕は言った。


「全部聞いたよ。……ごめんな。俺の勘違いで、君を傷つけて」


「……」


「冷静に考えてみれば、分かることなのにな。
いくら借金があるからって、君が進んでうちの店で働こうとするはずないのに。
……ほんとは、俺のために働いてくれたんだろ?」


桜子は掛け布団の端をギュッと握って、僕を見た。


「本番の噂もさ、なんで俺、信じちゃったんだろう……。
ありえないよな。本当にごめん……
桜子が一番怖い想いしたときに、味方になってあげられなくて、責めて……ごめん」


桜子の顔は今にも泣き出しそうだった。

そして僕も。


どれだけ言葉を尽くしても、空回りな気がした。


僕がしゃべればしゃべるほど、

桜子の瞳に涙がたまっていくし、
僕の胸はどんどん痛くなる。
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