ラスト・ゲーム
─しばらくの、沈黙。
重力を無視した分厚い空気が、肩にのし掛かる。
「なんだよ元也~、お父さんがせっかく誘ってるんだぞ?」
その空気を破ったのは明るい響き。
親父の声のトーンは、変わらなかった。
…わかっていた。
親父が俺を気遣って、わざと普通に振る舞ってくれていること。
俺を元気付けたくて、誘ってくれていること。
全部、わかっていたんだ。なのに…
「…やらねぇって言ってんだろ!!」
正しい思考は醜い感情に屈して、出てきたのは最低な怒鳴り声。
その場にいたたまれなくなって、親父が今どんな顔をしているのかが怖くて。
彼の姿をしっかり認識しないまま、俺は階段をかけ上がった。
…俺が一番、一番尊敬しているはずの、親父の優しさを、はねのけて…