憑人
始り
「あいつが…きた…」
突然、呟いた。いつものことだ、放って置こう。
マックは雑誌を読み続けた。
「あぁ…またきたぁ…」
まだ続ける。
「俺は…じゃないよ…ウィンドだ」
毎回聞こえない。ウィンドは誰だと勘違いされてるんだ。
まぁ誰が誰と勘違いされようが関係ないが、こうなるともう止まらない。
「うるさい!」
一応叫んでみる。
「違うて。俺はウィンドだって」
毎回の様に効果はなし…か。
じゃあここから立ち去るか。いやいやそれは無理だ。何故かって?ここは病院なのだ。俺は足の骨折でここに入院している。一人では動く事さえままならない。仕方ない。ナースコールを押す。俺くらいナースコールを利用している者も少ないだろう。なんたって毎日の必要最低限な利用に加えて一日平均約8回呟かれる隣りの奴の幻想の度に俺は押している。よって自ずと多くなる。
ナースコールを押して数十秒くらいだろうか、いつものナースがやってきた。ナースのほうも慣れたものでいまさら驚きもあわてもせず冷静に対処していた。
「ウィンドさん?大丈夫ですか?」
ナースが呼びかける。しかしウィンドは反応せず
「だから・・・え?・・・うん・・・あぁ」
などと独りで呟いている。誰と会話しているかわからない。が、確実に誰か(大方幻想の住民)と会話しているのだと思うと不気味である。
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