忘れられない人
龍二は、一度だけ部屋を出て隣の部屋に行った。「寝たか?」と聞いた後、静かに扉を開けて部屋の中に入ったって事は、陽菜はもう寝てしまっていたんだろう。

夫婦になろうとしているんだったら‥隠し事はナシなんじゃないのか?
お前は苦しくないのか?

龍二に向かって嘆いていた。俺らは以心伝心の間柄だから、俺の問いかけに龍二が気付いた。

『明日こそ渡そう』

そう言って微笑んだ。微笑んだけど‥心の中は不安な思いでいっぱいなんだろう。こいつの心は泣いていた。


俺は、こいつが買いに来てくれる以前の事は全く知らない。

二人がどうやって知り合ったのか。
どのくらい付き合っているのか。
どんな恋愛をしてきたのか。

全く知らない。
でも雰囲気からして、大きな試練を乗り越えて今の二人がいるような気がしてならない。でないと‥こんなに二人は苦しまないだろう。


手を伸ばせば届く距離にいるのに‥どうしてその手を掴もうとしないんだ?

陽菜も龍二も‥どこを向いているんだ?
< 134 / 140 >

この作品をシェア

pagetop