忘れられない人
思い出の箱

リュウジ

『リュウジと最初に逢ったのは、本当に一瞬だったんだ‥』

そう言いながら窓を見つめると、まだ外は暗かった。「暗い」というだけで、何故か寒気を感じた。これから先の私たちの関係を、いち早く知らせてくれているかのようにも思えた。

私は、下唇を強く噛み締めてから話し始めた。



私ね、初めてのバイトってコンビニだったんだ。シフトは、月・水・金と、土日のどっちかで、時間は夕方の5時から10時までの時間に組まれてたの。

龍二も知ってると思うけど、私ってのみ込みが遅いでしょ?だから、レジの打ち方、商品の陳列、検品‥一通りの仕事を覚えるのに3ヶ月もかかったんだ。

パートの人にグチグチ言われながらも、何度も聞いて、紙に書いて‥私なりに覚えるように努力はしたんだよ!!

ここだけは、少し強めの口調で話していた。


バイトを辞めたい‥って何度も思った。
辞めてしまえば、こんなに苦しまなくても済むでしょ?

だから‥
ある日ね「今日こそは店長に話そう!!」って、そう思ったんだ。意を決意してバックに下がろうとした時、レジに並んだお客さんが缶コーヒーを持ってあるタバコを指定したの。でも私は、それを探すことが出来なくてね。

結局タバコの下に書いてある数字を言ってもらったんだ。そしたらね

「このタバコだけは覚えといて」って微笑みながら私に言ってきたの。


突然の出来事で、私は「はい‥」しか言えなくてね。ふと我に返ったときには、もうその人の姿はなかったの。

商品の代金がレジの横に、丁度の金額で置かれてたから「常連さんなのかな?」って私は勝手に解釈してたんだ。


さっきまで、店長に辞めたいって事を伝えようと思ってたんだけど‥その人の微笑みを思い出したら「もう一度逢ってから辞めればいいよね?」って不意に自分に言い聞かせてたんだ。


もう来ないかもしれないんだよ?
誰かも分からない人なのに‥

何故か‥また逢えそうな気がしたんだ。
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