不幸者は名前を望む。



なぜ、幸せそうなんだ。

わたしを憎めばいいのに。
恨めばいいのに。
知ってるんだぞ、わたし。


わたしと関わってるから、コイツも嫌な目にあったというのに。
なのに、なのに。

わたしは嫌なやつだ。
それを知っていながら、甘えてた。


わたしが近寄れば、安心したように笑うから。

そうやって笑うから、希望をもってしまう。いっそ汚い言葉をいっぱいコイツから言ってくれたならば、何も望まなくなるのに。笑うから。


最後までコイツが笑うから、妙な希望を持ってしまった。


また、わたしを受け入れる誰かがいるんじゃないのかって。



「ことわり……、理、」


うん。
少しなじんだな、この名前。
わたしは、“大事な彼女”になりきって生きてみることにしよう。


コイツが大事だというその人に。
なりきって、演じてみよう。


そうすれば、わかる時が来るのかもしれない。




“大事な彼女”―――理が愛したそれを。



―fin―


next>>言い訳くさいあとがき

< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop