あたしと彼と白いキャンバス
「ねーねー、結ちゃん」


放課後の美術室に遊びにきた志乃が、電話を切ったあたしの袖を引っ張る。

あたしと対面して絵を描いている篠宮先輩は、口元に笑みを浮かべてスケッチを続けていた。



「今日、結ちゃんの家に遊びに行ってもいい?」

「今日?」

「うん。明日は日曜だから、できれば泊まりで。ダメかな?」


首を傾けて問う姿は小動物のような愛らしさで。

…断れませんとも。


「いいよ」


「やったあ」


志乃は天真爛漫に喜んで、あたしの腕を揺すった。
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