楽園─EDEN─

そして、そのまましばらくの間は、スズネとエリゼの不毛な睨み合いが続く。


哀れにも、二人の間に挟まれ『蛇に睨まれた蛙』状態となったイヴは、ふるふると震えあがることで、何とかこの場を耐えしのごうとした。


「分かった」

しかし、意外にもこの状況を打破するべく真っ先に声を上げたのは、他でもない、銀色の姫君その本人であった。


「エ、エリゼ様…‥」

"珍しく"物分かりのいい主の様子に、イヴはホッとする。

「……」

だが、それに反して、つい先ほどまで当の本人と無言の応酬を繰り広げていたスズネは、わずかに眉根をひそめた。


ところが、そんなメイド頭の疑惑の視線などどこ吹く風と言った感じで、エリゼは先ほどの勢いもどこかに、スタスタと非常に大人しく食堂を出て行こうとする。


「ごめんなさい、スズネ。もう、何だかどうでも良くなって来ちゃって」

完璧なまでの笑顔で、そうヒラヒラと手を振って部屋を退出して行くエリゼに、イヴは何となく拍子抜けした気持ちなった。


けれど、何はともあれ結果オーライな事に満足し、その柔らかな面差しに更に柔和な微笑みを浮かべると、安堵いっぱいにスズネの顔を覗き込む。


「いやぁ~、良かったですね。スズ……スズネ?」

けれど、それに反して、妙にスッキリとしないスズネの表情に、イヴは不思議そうに首を傾げた。



───…そうして今まさに、

たった一人の姫君の何気ない"わがまま"から始まった『おとぎ話』が、幕を開けようとしていたのである。

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