ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~


ドキ ドキ ドキ....


1歩近づくごとに、胸のドキドキが増していく。

そして……啓介くんの手に自分の手を重ねて、ジッと見つめ合う。


「色々と、ごめん。 結城さんのメールに、本当はちゃんと返事をしたかったんだ。
だけどあの時の僕は良太郎のことを考えていたし、自分の想いをちゃんと伝えるのは、みんなに迷惑をかけることになると思ってた。
だからずっと言えなかったし、結城さんとやり取りするのも、怖かった」


ギュッと手を強く握った啓介くんが、ゆっくりと静かに目を伏せた。


「……ここ数日、良太郎はずっと僕の家に居て、色々な話をしてたんだ。
小さい頃の話や、学校の話、渉とさゆちゃんのこと、そして結城さんのこと……本当に色々なことを話してた」


少しだけ俯きながらも、言葉は止まることなく続いていく。


「小さい頃から、僕たちはずっと一緒に生活してきて……その中で僕は、渉や良太郎が笑ってくれるのが嬉しかった。
僕みたいな冴えない奴の近くに居て、いつも笑ってくれる二人のことが好きで……この関係が壊れてしまうことが怖くて、いつも少し後ろから二人を見てたんだ」


私の知らなかった、啓介くんの想い。

ううん、私だけじゃなくて、きっと犬飼くんや青山も知らなかった話……それが今、ゆっくりと語られていく。




「ツラいとか苦しいとか、そういうのは思わなかった。
二人が笑ってくれればそれでいいし、二人が笑ってくれるから僕も笑顔になれる。
だからね……今回のことも、“良太郎が笑顔になってくれたら自分も笑顔になれる。”って、信じてた」


私に視線を戻した啓介くんが、真っ直ぐに私だけを見る。




「だけど僕は、笑顔にはなれなかった」


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