~LOVE GAME~


昼休みが終わり、教室に戻って午後の授業が始まる。
そして、フッとあることに気がつき、「あっ」と声が出た。

「どうした、松永?」

先生が黒板に文字を書くのを止めて、振り返って私を見た。
しまった。思わず声が出てしまった。

「いえ、なんでもありません」

ちなが小声で「どうしたの?」と聞いてきたが、「なんでもない……」と答えた。
そして、授業に集中する振りをして俯く。
そうか……、さっき昼休みに龍輝君に感じた違和感の正体に気が付いた。
笑顔だ。
"友達の妹"だと答えた時の龍輝君の笑顔が、表の顔……。
つまり、愛想笑いのような笑顔だった。
作ったような、当たり障りないような笑顔。
私と再会したばかりの頃のような……。

最近の龍輝君は違った。
龍輝君は付き合う前の、あの"ゲームをしよう"と言われた頃のような冷たさや素っ気なさも減って、甘い雰囲気をまとい、穏やかな笑顔を見せてくれるようになった。
私に愛想笑いなんてすることはなくなっていた。
それなのに……。
あの時だけ、私に作った笑顔を向けたのだ。
だから、違和感を感じたんだ。

「どうして嘘つくの……」

小さな声で呟く。

当たり障りのない嘘をついて、私に誤魔化したってことだ。
友達の妹じゃないなら、あの子は誰?
親戚の子?
浮気相手?
いや、むしろ私の方が浮気相手だったりしたら逆に笑うけどね。
……笑えない。ショックで寝込むだろうな。

あの子はいったい誰なんだろう。
龍輝君にとって、あの子はどんな存在なの?

幼馴染みだからって、付き合っているからって、まだまだ知らない龍輝君の方が多い。

もっと突っ込んで聞きたいけど、しつこくして龍輝君に嫌われたくない。
でも、知らないふりや見て見ぬふりもなんだか胸にシコリが残って気分が悪い。

どうしたらいいんだろう……。

頭が混乱して来て整理が付かない。
机に伏せて、にじみそうになった涙をそっと拭いた。






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