倦む日々を、愛で。
主婦 『電池』
『電池』

 こいつは持ちのいい電池を内蔵しているに違いない。

 このクソ暑い中、起きたはなからノンストップで動き続ける元気な怪獣を見つめながら私は思う。

 部屋に閉じ込めておいたところで家事がはかどらないので公園に連れてきたが灼熱の太陽の下、そのパワーは衰えるどころかかえって増しているようにも思える。お前は太陽電池内蔵か。そりゃエコロジーだねははは……

 私はといえばさほどもちの良いバッテリーを積んではおらず、平均的な20代後半がそうであるように、暑さにやられて座っている。なぜこんな場所で生き生きと動けるのか分からない。やはり怪獣は私たちとは生態が違うのだ。

 小さな怪獣は暑さでカラカラに乾いた水気のない地面にちょこんと座り、注意深く観察して何かを見つけたらしい。真面目な顔でこちらに向かってくる。

「はい」何かを握りしめた手を突き出す。

「ん?何拾ったの?」

 私が広げた手のひらに置かれたのは小さく細いものだった。枯れ枝?…にしては模様があるような…まだらなような…これは…トカゲの…シッポ?

 爬虫類は平気な方だが死体は苦手だ。私の平静に大型で勢力の強い台風上陸。

 落ち着け私。ほらトカゲってピンチになると自分でシッポ切って逃げるっていうじゃん?たぶんそれだよそれ。生きてるよ、そのトカゲさん…でもこれ、よく見ると先端が3つに分かれて……!!!

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