短いの【ショート集】


時に泣きすがる女を蹴り飛ばし、痣だらけの顔に唾を塗りたくる。

時に目隠しで全裸の女を写し、ネットに晒しては許しを乞う姿を嘲笑う。

時に四這いの背中にズガリと座り、丸々とした尻を叩き、綺麗な髪を鷲掴みヒタヒタ歩かせる。

蝋を垂らし、カピカピの体を縄で吊り上げたりもする。

全ての行為の締めくくりは俺自身の最後の白い一撃を顔や口にぶちまける。

女は決まってこう言う。
「ああ、嬉しい……」と。

そして俺のポケットには万札が何枚も詰め込まれる。

女は全て客。皆、一度味わうと二度三度と虜となり、常連へと変化する。いや、普通のエムから俺専用のエムへと変わる。

皆は俺をSSS(スーパーサディスティック鈴木)と呼ぶ。界隈では知れ渡った通り名だ。

店はSMクラブではない。俺の生まれながらにして持ったサディスティックテクを堪能しに来る所だ。

女に言わせると……
「あのテクを知ったら、他のエスなんてエスじゃないわ」

「私がドエムになりきれるのは彼だけ」

「オーラよ。生まれつきのスターって言うのかしら?スターのSも彼の物よ」

女達は俺のサディスティックテクを味わい、その対価として大金を支払う。

このテクを誰かに継承しようと試みても絶対に上手くいかない。
何故なら、訓練で身に付くSSSではないからだ。

時折女達が嬉しそうに予約を待つ姿を見て苦々しく思う。
「チッ、俺がもう一人いれば……」
ある種のアーティストとしての苦悩かも知れない。才能は量産出来ない不幸。

俺がもう一人いれば売上は今の倍は軽い。しかし望みは金等ではない。無論この妙技を安売りする気は毛頭ない。商売なのだ。

しかし日々予約で埋まる様を見ていると、常に女達の悦な顔が頭にこびりつき離れないのだ。俺の妙技を今か今かと涎を滴らせて待ちわびるその顔。

何処かに俺と同等……いやそれ以上のSSSがいないものか。きっと存在するはずだ。無論最後のS(鈴木)は違うアルファベットでいい。もしそんな奴に巡り会えたら、きっと良きパートナーになれるのに。


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