コーヒー溺路線
ミルクと砂糖
 

松太郎は社より少し離れた場所にある居酒屋にいた。あっという間に一週間は経ち、小野梓が言い出した歓迎会は金曜日に行われた。
 


 
「藤山さんと富田さんの歓迎会なので、勘定は二人を除く皆さんでの割り勘になりますからね」
 

 
「えっ、そんな困りますよ」
 

 
「いいから、ね。勝手に歓迎会することも決めちゃったんだから」
 


 
幹事らしい梓に彩子は自分を除くことに対して動揺し、あたふたと話しかけている。
梓はけろりとした顔で彩子を軽くあしらっていた。
その様子を松太郎が彩子の隣りから眺めていると、彩子は諦めたように溜め息を吐き、ふとそんな彩子と松太郎は目が合った。
 


 
「困っちゃいますね」
 


 
苦笑を漏らす彼女に、松太郎もまた苦笑をしてそうですねと答えるしかなかった。
 

彩子とコーヒーショップに行ったあの日以来、松太郎は彼女の顔を見る度にマスターの言葉が脳裏に浮かんだ。
 


 
「彩子ちゃんね、去年結婚をして結婚式も挙げないままに離婚をしたんだ」
 


 
松太郎はまさか彩子が既婚歴のある女性だとは夢にまで思わなかったのだ。
 


 
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