たまには、こんな日も
「もうひとつ」


また口の中に入れられた桃を、ゆっくりと咀嚼し飲み込む。


「もう、いらない」


5つ目が口に入れられる寸前で、私は首を横に振った。


「そうか」


悠君が桃の入ったお皿とフォークをテーブルに置いて、私のおでこに手を当てた。


「病院、行くか?」


「ううん」


さっきとは打って変わり、優しい優しい悠君の声。


「薬飲んで寝とけ」


「うん」


悠君に渡された錠剤2粒を、水で流し込む。


「ほんと、手間がかかる奴」


やっぱり、口の悪い悠君。


でも、さっきみたいに嫌な感じはしない。
< 9 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop