架空の城塞
「全艦マウント確認。基準歴、基準点設定完了」

「ベイグの状況はどうか」

「システム管理人はレベル2で城塞と同期中です」

「ならここから指示が聞こえているな。ベイグ、どうか?」

 艦長の声に反応して、彼女の感覚デバイスに直接声が届いてきた。

『聞こえているよ、スラッド艦長』

『良い声ね。何処で新調してきたの?』

『ラドゥムのサーバで拾ったのよ』

『よくまあ、あんな犯罪都市まで出向くわね』

『この艦のシステムなら超光速情報通信網の中を希薄にならずに泳げるわよ。それこそ銀河の果てまで』

『銀河の果てまで?それは幻想に過ぎないわよ。超光速情報通信は情報の拡散でしかないから、銀河の果てに行くのでは無くて果てからの情報を感じているに過ぎないわ』

『そうね。今のこの私達のように』

『じゃあ、そろそろザカーエッジのサポートをお願いね』

『了解、艦長』

 システム管理人のベイグの声が自分を離れるのを感じて、スラッドはこの最新鋭の電子戦艦のシステムが順調に作動しているのを確認した。

 今の会話ログを見ると僅か1秒。その時間も感覚のシフト時間のみだ。排時接触によるシステム管理人との情報共有は良好のようだ。

 無意識にショートカットのブロンドの髪を掻き上げ、スラッドは指示を出した。

「全システムを解放。これより我が艦は情報戦に突入する」

 艦橋とシステムから了解の声が返り、銀河帝国最新鋭電子戦艦〈ジナス〉は、旗艦の作戦開始前に、戦闘に突入した。
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