叶わなくても
香奈さんや、拓哉さんの事。

つまらない話で盛り上がった事。

涙が、溢れそうになってあたしは必死で堪えた。

もう涙は出ないと思ってた。

最近になって、涙はまた戻ってきた。

不思議な事に、聖也と詩織が付き合った直後は出なかったのに・・・

だからこそ、思い切り泣きたくなる。

思い切り、言いたくなる。

聖也が、あたしに見せた笑顔と詩織に見せる笑顔は違った。

聖也が、詩織に向ける目は詩織が居なくなる前とは違う。

あたしに、向ける笑顔は詩織が居なくなる前の詩織に見せた笑顔だった。

だからこそ、辛い。

少し、大人になった詩織に見せる笑顔は・・・全然違う。

「はい、羽衣」

「置いといて」

聖也が、洗うお皿を持ってやってきた。

「泣いてた?」

「なっ!何で!?」

「嘘つくと、めっさ噛むよな」

「うぅっ・・・」

だって、大好きな聖也相手に嘘はつけない。

「どうしたんだ?」

「なんでもないよ!!なんでも・・・」
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