【短編】どんな君も好き


「みどり……ありがと!」


私も微笑んだ。


きっと、みどりになら話せる……。
大丈夫!


「みどり、聞いて!」
「なに?」
「実は私……」


そのあとの言葉がでてこない……。


言わなきゃ!
言わなきゃ、ダメ!
分かってるでしょ、私!!!


「えみ?」
「ま、って……少し……」
「いいよ」


落ち着かなきゃ……。
大丈夫……。
平気……。
みどりなら、大丈夫……。
大丈夫よ……。
言わなきゃ、自分が苦しくなるだけ……。
大丈夫、言える!!


「実は私、お父さんから……虐待を……受けてるの!!」


最後の方は早口になってしまった。


ちゃんと、聞き取れたかな?
もぅ一回って言われたら、どうしよう……!


そんな事を考えていた時、みどりが私を抱きしめた。


「えっ?」
「なんで、はやく言わなかったの?」
「ごめんな、さい……心配、かけたくなくて……嫌われたくなくて……」
「……馬鹿だな、えみは……」
「えっ?」


「僕が、えみを嫌いになるわけないでしょ」


みどりは優しい声でそういった。


でも、次の日……。
その言葉は完全に嘘へと変わった……。

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