口笛
 山田先生は、時には冗談を交えて授業を行う面白い男の先生であったが、「時間を守れ!」が口癖なだけに、時間には厳しく、時間に遅れることをひどく嫌っている先生だった。

 時計の針が三十分を回ると皆、急に静まり返っていた。教室の扉が開いたらすぐに起立礼の合図をしなければならない。少しでも遅れたり、ざわついていたりするとその日は何かしらの罰を皆で覚悟しなければならなかったのだ。それは多量の宿題であったり、トイレの大掃除であったり・・・。

 号令をかけるのは、前日の始業式後に開かれた学級会で、学級委員長に選ばれていた僕の役目だった。

 時計を見ると、長い針はすでに三十一分を回っていた。一瞬拍子抜けした僕は、隣のクラスメートと顔を見合わせた。いつもジャストタイムの山田先生が遅れるなんて?そして、拍子抜けして油断したその瞬間、教室のドアが勢いよく開いた。

 遅れた先生は罰の悪そうな表情をしながら、それでもなにやらうれしそうだ。その先生の後ろに誰か立っているのが見えた。

「おっ、転校生でねが!」
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