翼に甘くキスをして
「あはっひっははは」

「あ、あの‥」



お姉さんの笑いはなかなか止まらなくて、どうすれば良いのかオロオロする。



「おーい」

「あははっちょ、まっはひはー、はー」

「華(ハナ)ー笑いすぎなんだよお前はぁ」



ヒロくんが、ちょっと嬉しそうに歯を見せた。



「いきなり笑ってごめんね?」

「あ、いえ‥」



高い位置から結んだポニーテールが落ち着き、その綺麗な顔がニカッと悪戯に笑う。



「キミが翼ちゃんね?」

「は、はいっ」

「ふぅーん‥」



大きな吊り目を上から下まで動かして、じっくりと私を見てるお姉さん。

うぅ‥緊張します。



「華‥翼が怯えてんだろ?」

「おっと、ごめんごめん」

「あ、あの‥?」



ヒロくんのお友達‥かな?



「翼、コイツ生徒会長だから。一応覚えといて」

「一応ってなんだ一応って」



2人とも仲良いなぁ。



「どーもー。生徒会長やってます、桜木 華(サクラギ ハナ)です。よろしくね」



差し出された手に自分の手を重ねながら、



「水月 翼(ミナツキ ツバサ)です。よ‥よろしくお願いしますっ」



深々と頭を下げた。
--‥すると



「ぷっくくく」

「はーなー」

「ごめ、だって可愛すぎっ」



私は、どう対処して良いのかわからずに、ヒロくんを見上げた。



「気にすんな。コイツ、笑い上戸なんだよ」

「笑い上戸?」

「箸が転げても笑うヤツだから」



箸?



「はー‥火野が言ってた以上に可愛いわ」

「翼は俺のだからな?」

「はいはい。ね、この髪って地毛?」



わっさわさのまんまだった頭を、手櫛でといてくれる生徒会長。



「は、はい」

「いーなー。猫っ毛の茶色ふわふわー」

「えと‥私は、生徒会長みたいな真っ黒ストレートに憧れマス」



そう言うと生徒会長は、その大きな吊り目をふわりと細めて微笑んだ。



「華って呼んで?」

「え?えっと‥」

「ようこそ我が校へ。翼ちゃん」

「お、お世話になります。華‥さん」



なんだろ。なんだかすごく照れ臭くって、なんだかすごく‥嬉しい♪

それに……



「なんかあったらアタシに言いなね? 火野じゃ役に立たないからさっ」

「はーなー‥」

「あははっ」



なんだかとても、楽しかった。
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