溺愛プリンス

「志穂ちゃん、ごめんね?」


……え?

驚いて、なんども瞬きをするあたしに、篤さんはガバリ!と頭を下げた。


「あ、篤さん?」

「この前は、本当にごめん!俺、あんな言い方して……すごく後悔してる」

「……」


あんな、言い方?


「志穂ちゃんの気持ちが本物じゃないなんて、俺、偉そうなことを……。
勇気を出して言ってくれたのに、俺間違ってたって思ってて……」

「……」


篤さん……。
優しいな……だから、ずっと黙ってたのかな?それを……考えてて。

あの返事は、篤さんなりに考えて、あたしを極力傷つけないための言葉だったはず。




「篤さん、あたし……後悔してません。ちゃんと伝えられてよかったって、そう思ってます」

「……志穂ちゃん……」



雨音が響く。
ドキドキと加速する心拍数。


篤さんの手が、肩に触れる。
運転席から身を乗り出して、近づく距離。


え、うそ……篤さんに、キスされるの?


前髪が触れる距離、甘い吐息がかすめるその距離で、あたしはそっと瞼を閉じた。






――――……『俺は求めてる……』



!




『こんなふうに……ずっと、な』





「…………」

「……志穂ちゃん?」



なんで?

なんで……こんな時に、アイツの顔なの……。



「……篤さん」



あんな、傲慢で、俺様で……。
最低なヤツ。



「…………ごめんなさい」


ごめんなさい。
あたし……どうかしてる。

篤さんのキスを拒んで……瞼の裏に浮かんだのは

ハルだった……。




< 107 / 317 >

この作品をシェア

pagetop