溺愛プリンス

王子は遠い人



「はあ……」



知らず知らずに、今日何度目かのため息。



ハルを引っぱたいてしまった、あの夜からすでに2週間もたっていた。

テストも終わり、夏休み。
それでも時々、大学へ行く用事もあったりで忙しく過ごしてはいるんだけど……。

その間、ハルはあたしの前に姿を現していないんだ。

何も言わず、顔を見せないなんて事今までなかったのに……。



怒ってるよね……。
あんなふうに追い出しちゃったんだもん。



「はあ……」

「そんなに気になる?」

「……うん」



え?


パッと顔を上げると、テーブルを挟んだ向かい側で茜が可笑しそうに肩を揺らした。



「……な、なにが?……篤さんの事なら、もう……」



パチパチと瞬きを繰り返して、慌てて手元のグラスに手を伸ばす。



「違う。ハロルド王子!」

「……っ、ごほ、ごほ!」



ゴクンと飲みこんだ炭酸に思わずむせこんだ。



「もう。そんなわかりやすいのに……。素直になんなよ。意地張ってないで」



そう言った茜が、呆れたように目を細める。



「意地なんか張ってないし、なんでそこでハルなの?」

「じゃ、まだ篤さんのことで悩んでるの?」

「そ、そういうわけじゃないけど……」



茜には、篤さんとキス出来なかったのは言った。
でも、どうしてかってことまでは話してない。

……それなのに、そう思うってことは。
やっぱりそうなんだろうか……。


< 114 / 317 >

この作品をシェア

pagetop