溺愛プリンス

寝癖のついたまま、驚いたように目を丸くしたハル。
その瞳が、パチパチと何度もまたたいた。



「心配してくれて、ありがとうございました!
ハルが、ここに来てくれて、本当に嬉しかったです……

だから、あの……」



えっと……、それから、それから……。

自分の中に芽生えた、今のこの気持ちに追いつけない。
でも、まっすぐにあたしに向けてくれたハルの優しさに、少しでも応えたい。

それを、どうやって言葉にしたらいいのかわからなくて、思わず口ごもる。



その時だった。



「っ!」



ギュッと手を引かれ、そのまま広い胸の中に抱きすくめられた。
掻き抱くようにクシャリと髪の中に滑り込んできた手。

肩口に顔を埋めたハル。

その甘い吐息が、首筋にかかりギュッと目を閉じた。




「可愛いこと言うな。 気が変わりそうだ」

「え?」



掠れた声でそう言われれば、ガチガチに固まる身体。
そんなあたしに気付いて、フッと息を漏らすとハルは腕の力を緩めた。

少しだけ開いた隙間からそっと見上げる。

前髪がかかる距離、吐息が唇に触れる距離で、ハルは小さく笑ってそっと額にキスを落とした。



「……行ってくる」

「…………、はい」





――――ガチャン。


ハルが去った部屋はすごく静かで。
なんだか現実感がない。
フワフワしてて、まるで……そう、夢の中にいるみたいな感覚だった。



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