溺愛プリンス



「……あの、この前……の事なんですけど」

「この前?」

「あ、図書館で」



首を捻った王子に慌てて言葉を付け加える。
『図書館』と言ったあたしから視線を外して王子は宙を仰ぐ。

しばらくして「ああ……」と納得したようにカップをテーブルに置いた。



「なに?」



少しだけ口角をキュッと持ち上げた王子に目が奪われた。




「……」




なんでこんな気持ちになるの?
すっごく敗北感。

……得体のしれない“なにか”に負けた気分になる。




いるんだな。
ほんとに王子様って……。




たしかにこの人はどこかの国の王子様。

本物なんだけど。


だけど、そうは言ってもこのモデルなみのルックスはズルすぎる。



頭もいい。
容姿は完璧。

そして、みんなから慕われてて……。





「……志穂?」

「あ」




王子はあたしの名前を呼ぶと、椅子の背もたれから体を起こした。


テーブルに身を乗り出すようにして、王子はあたしの顔を覗き込む。
その瞬間、風に乗って甘い香水の香りに包まれた。




ドクンッ!



ひゃああああ!
顔、近くに寄せるの、やめてもらえますー!!!?



内心焦りながら、あたしは口を開いた。


< 17 / 317 >

この作品をシェア

pagetop