溺愛プリンス


広間に入った瞬間、優雅なバイオリン協奏曲が舞い降りてきた。

豪華絢爛な広間を見上げる。
三階まで吹き抜けになっていて、頭上にはいくつものシャンデリアが見て取れた。
天井には天使がたくさん描かれている。


……舞踏会って、本当にこういう場所でやるんだ……。



そのスケールに圧倒されていると、エスコート役の人が一礼して去り、かわりに現れたのはショーンさんだった。



「志穂さま」

「ショーンさん!」



よかった……!


知った顔に思わず安堵の声をあげる。
すると、ショーンさんは表情一つ崩さずにそれを制した。



「――お静かに。 ご存じだとは思いますが、ここにいる皆様は、世界の名だたる方々ばかりです。くれぐれも失礼のないよう、接触はお避け下さい」

「わ、わかりました」



慌てて首を縦に振る。
ショーンさんは無言でコクリとうなずくと「こちらへ」と言って、あたしの手をとった。



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