溺愛プリンス

王子が残したもの







「ん……、朝?…………」





重たい瞼をなんとか持ち上げる。
窓から差し込む柔らかな日差しに、ぼんやりとしていた意識が少しずつ浮上してくる。


そ、そうだ。
あたし昨日……。

一気に蘇る記憶。
気怠い身体に残る、甘い余韻。


あたし、いつのまに寝ちゃったのかな……。




あれ?


違和感に気付いて、振り返った。




「……え……」




まだ明るいうちから飽きるほど求め合っていた、その人の姿が見当たらない。



「ハル?」



シングルの木製のベッドに身を沈めたあたしは、フカフカのシーツを手繰り寄せた。

そこには人のぬくもりはなくて……。
いなくなって時間がたってる事は明らかだった。



呆然としたまま、ギュっとシーツを抱きしめる。




夢……だったのかな……。
あたしが描いた願望。
ハルのくれた夢……。



窓の外の、大きな木の枝葉が。
朝の穏やかな風に揺れていた。



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