溺愛プリンス




あたしが願うのは、ただひとつ。

どうか、ハルが笑ってくれますように。



幸せになってくれますように……。







それからあたしは、渋るマルクにお願いして、その足で空港に向かった。

ちょうどいい。
あたしに与えられていた期間は、今日で終わるんだ。


ギュッと握りしめた日本行のチケットには、今日の日付。
これは、クローゼットの中のこの服と一緒に残されていたモノだった。

ハルが、あたしに用意してくれたもの。
裏側をそっと指でなぞる。



「…………」



そこには、こう書かれていた。




”乗り遅れるなよ。気を付けて行け”



思わず苦笑する。



あたしの字とは違う。
慌てて書いたような、走り書き。
まるで、筆記体みたい。


汚いな……。
ちゃんと日本語勉強してたの?




もう。最後まで、命令口調なんだから。


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