溺愛プリンス


はあ……と、またため息。
視線を手元に落としてハッとした。


あれ、もうこんな時間!


時計はすでに午後の2時を指していた。




今日はもともと午前中だけの講義だったから、1時には帰ってる予定だった。

だけど、あたしの予定はいつもずれる。
それはもちろんこの王子様のせいなのだ。

今日も帰ろうとしていたあたしを、執事のショーンが迎えにきて。



『お茶をご一緒にとの事です』



なんて相変わらずいきなり現れて、いきなり有無を言わさず連れて行かれる。




みんなさ……
あたしをうらやましいって思ってるかもしれないけど……。


実はすっごく振り回されてると思う。




慌ただしく鞄にノートやらペンケースやらをしまうと、席を立った。

そこでようやく王子が顔を上げる。



「志穂?」

「あたし、これからバイトがあるので失礼します」




そう言ってペコッと頭を下げた。





「……バイト?」




王子が不思議そうに首を捻った。


そっか……きっと王子は“バイト”って言葉自体知らないんだろうな……。



そうは思ったけど、説明するのもなんだか面倒くさくて、そのままペコリと頭を下げてテラスを後にした。


< 28 / 317 >

この作品をシェア

pagetop