溺愛プリンス


最近、さらにスパルタになったクロードさんとの静かな戦いは、それに気づいたメイドさんたちによってなんとか終わりを迎えた。



「クロード様ったら、最近一層張り切ってますわ」



苦笑交じりのメイドさん。
どうやら、ショーンさんがしびれを切らして扉を開けるまで、みんなソワソワと部屋の前を行ったり来たりしてたらしい。



う……。ごめんなさい。
あたしたちってば、爆睡してました……。





ローズベルト家特注のドレスワンピースに身を包み、長い髪を編みこんでいく。
鏡の中の自分は、まるでお姫さまだ。

クスリと苦笑して、大きなドレッサーから立ち上がる。




と、その時胸元のネックレスが、キラリと光った。


誘われるように窓の外を見ると。
広い庭の向こう、屋敷の門が開き、何台もの車が出て行くのが見えた。




「…………」



ハル、行ってらっしゃい。

心の中でもう一度言って、あたしは駆け足でクロードさんの元へと向かった。






……こうして。
平穏を抜け出したあたしの、忙しくも充実した一日が始まるのだ。



近いうちに約束されている
幸せな結婚を夢見て――――……





fin.


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