溺愛プリンス


泣きたい……。


でも、こんなことで泣くなんて。
絶対嫌だ。



なのに、あたしの意思とは裏腹に、視界はどんどん滲んでいく。



い、イジワル!



「ッ……、ご、ごめんなさ……」


「何? 聞こえない」




喉に何か詰まったみたいに、声が出てきてくれない。


昼下がりの大学のテラス。

こんなことして……誰かに見られでもしたら、どうするつもり?



なんなの?

なんなの、もうッ!



震える唇をきつく結んで、キッと王子を睨んだ。

だけど……。




「きゃ……」




小さなテーブルを挟んで、さらに腕を引き寄せられた。




そして……。







「……!」







……なッ……




頬にかかる、柔らかな髪。
押し当てられたのは……唇……?




……なんで……




それは。

まるで勢いに任せたみたいな、強引なキスだった。


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